KTXの出発まであと1時間、あるいは国際フェリーターミナルへ向かうまで少し時間がある。そんなとき、釜山駅前のチェーン店に入ってなんとなく時間を潰す方は多いのではないでしょうか。実は駅の目の前、道路を渡ってすぐの路地の奥に、築100年近い建物をそのまま生かしたカフェがあります。
ブラウンハンズ百済は、1920年代に建てられた旧百済病院の1階で営業しているカフェです。この建物は釜山初の近代式民間総合病院として開業した歴史を持ち、現在は韓国の登録文化財(第647号)に指定されています。赤レンガの外観は駅前のビル群とはまるで異なる佇まいで、扉を開けた瞬間、時代が変わったような不思議な感覚に包まれます。
目次
ブラウンハンズ百済の基本情報:アクセス・営業時間・場所と周辺スポット
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 住所 | 釜山広域市 東区 中央大路209番キル16, 1階 |
| 営業時間 | 毎日 10:00〜21:30(ラストオーダー 21:20)。臨時休業はSNSで告知 |
| アクセス | 釜山駅7番出口を出て道路を渡り、CU(韓国のコンビニチェーン)のある路地に入ると右手に赤レンガの建物が見えます。徒歩約2分 |
| 駐車場 | なし。駐車場の割引サービスもありません。 車の場合は近くの有料駐車場をご利用ください |
| 周辺スポット | 釜山チャイナタウン、草梁イバグキル、草梁伝統市場 |
カフェがあるのは草梁洞(チョリャンドン)という東区のエリアで、釜山駅の目の前に広がる地区です。ここは草梁イバグキルの起点でもあります。イバグキルとは全長約2kmの散策路で、朝鮮戦争の避難民が築いた山腹集落を縫うように続く道のことです。「イバグ」は釜山の方言で「物語」を意味し、この道沿いに暮らした人々の人生が幾重にも重なっていることからその名が付きました。ブラウンハンズ百済はその散策路のちょうど出発地点に位置しているため、イバグキルを歩く前の一休みとしても、カフェ単体の目的地としても自然に訪れることができます。

旧百済病院の歩み——診察室からカフェカウンターまで

この建物の歴史は、それだけで一本の記事が書けるほど濃密です。1927年、金海(キムヘ)出身の医師・崔龍海(チェ・ヨンヘ)が、外科・内科・耳鼻咽喉科・歯科を備えた釜山初の近代式民間総合病院としてここに百済病院を開院しました。当時としてはかなり大規模な施設だったようです。
しかし1932年、崔院長は突然病院を閉じて日本へ渡ってしまいます。その後、建物の用途は目まぐるしく変わりました。中華料理店になり、日本統治時代には暁部隊の将校宿舎として使われ、解放後は釜山治安司令部が入り、その後は結婚式場にもなりました。約100年の間に、これほど異なる顔を持った建物は珍しいのではないでしょうか。
2016年、インテリアブランド「ブラウンハンズ」がこの1階をカフェとして再生しました。特筆すべきは、当時の赤レンガや木枠の窓、凹凸のある壁面をあえてそのまま残したことです。新しく加わったのはエスプレッソマシンとテーブルだけ、と言いたくなるほど、建物の素顔がそのまま生きています。

空間に残る時間の手触り

店内に入ると、通りの喧噪がすっと遠ざかります。天井が高く、むき出しのレンガ壁から木枠の窓を通して柔らかい光が差し込んでいて、家具こそ現代的なデザインですが、その周囲にあるものすべてが100年近い時間の重みを静かに伝えてきます。
席を選ぶのにしばらく迷ったのですが、窓際の一角に落ち着きました。テーブル数は十分にあり、平日の昼過ぎでも座る場所に困ることはありませんでした。印象的だったのは、駅のすぐ近くとは思えないほど静かなことです。分厚いレンガの壁が外の音をほとんど吸収してしまうのかもしれません。

途中でお手洗いに立ったとき、建物の奥へと続く廊下を通りました。メインの客席から離れると、建物の古さがより鮮明に感じられます。実はこのとき席でホラー小説を読んでいたのですが、薄暗い廊下との相性が良すぎて、妙な臨場感が出てしまいました。

3階にはイビナイン(IBININE)ギャラリーという展示スペースがあり、入場は無料です。展示は定期的に入れ替わるため、訪れるたびに異なる作品に出会えます。なお、以前は2階に「チャンビ釜山」という書店兼複合文化空間がありましたが、2025年11月に閉店しています。

実際の店内の雰囲気が気になる方は、こちらの映像も参考にしてみてください(7分35秒から紹介されています)。
メニューと価格

ブラウンハンズ百済では自家焙煎の豆を使用しており、コーヒー系のドリンクを注文する際に2種類のブレンドから選べます。ミッドナイトはダークチョコレートとローストアーモンドのような深いコクが特徴で、メイフェアは花のような香りとすっきりした酸味が持ち味です。注文時にバリスタが好みを聞いてくれます。
主なメニューと価格は以下のとおりです。
| メニュー | ウォン (₩) | 日本円(税込参考) |
|---|---|---|
| アメリカーノ(HOT / ICE) | ₩6,300 / ₩6,800 | 約740円 / 約800円 |
| カフェラテ(HOT / ICE) | ₩6,800 / ₩7,300 | 約800円 / 約860円 |
| ブラウンラテ(ラテ+自家製クリーム) | ₩8,000 | 約940円 |
| アイスミルクティー | ₩8,300 | 約980円 |
| ケーキ各種(ティラミス、チーズケーキ、ヘーゼルナッツチョコなど) | ₩8,900 / 1切れ | 約1,050円 |
| レモンエイド | ₩8,800 | 約1,040円 |
| カモミール / アールグレイ / ジャスミンティー(HOT / ICE) | ₩6,500 / ₩7,000 | 約760円 / 約820円 |
※価格は1円≒8.5ウォンで換算(2026年9月時点)。為替レートにより変動する場合があります。
今回はアイスミルクティー(₩8,300 / 約980円)を注文しました。味はすっきりとしていてバランスがよく、丁寧に淹れられている印象です。ただ、釜山の他のカフェと比べると全体的に価格はやや高めで、アメリカーノがHOTで₩6,300(約740円)からというのは釜山の相場を考えると少し上の価格帯に入ります。空間の価値も含めた価格設定と考えれば、納得できる範囲ではあります。

ケーキも1切れ添えたかったのですが、今回は見送りました。ショーケースにはいちごティラミス、チーズケーキ、ヘーゼルナッツチョコケーキなどが並んでおり、いずれも₩8,900(約1,050円)です。なかでもいちごティラミスが人気とのことでした。見た目がよかっただけに、少し後悔しています。

カフェインが気になる方へ。デカフェはアメリカーノのみ対応しており、ラテなど他のエスプレッソ系ドリンクではデカフェの注文ができません。

カウンター付近ではオリジナルグッズや自家焙煎のコーヒー豆も販売しています。お土産にもちょうどよさそうです。

訪問前に知っておきたいこと

お手洗いの暗証番号: お手洗いにはデジタルロックが設置されています。暗証番号はレシートの下部に記載されているので、注文後にレシートを捨てないようにしてください。
Wi-Fi情報: Wi-Fiのネットワーク名とパスワードもレシートに印刷されています。退店するまでレシートは手元に置いておくと便利です。
スタンプカード: 「ストーリークーポン」というスタンプカード制度があり、ドリンク1杯につきスタンプが1つ貯まります。10個貯めるとHOTアメリカーノ1杯が無料になります。
駐車場は一切なし: カフェには駐車場がなく、提携駐車場もありません。車で訪れる場合は近隣の有料駐車場を探す必要があります。釜山駅から歩けば本当に2分で着きます。
3階ギャラリー: イビナインギャラリーでは、定期的に入れ替わるアート展示を無料で観覧できます。カフェのついでに覗いてみる価値はあります。
まとめ
ブラウンハンズ百済は、同じ路地の中にある他の店とあわせて訪れると、ちょっとした半日コースになります。

カフェのすぐ目の前にあるのがプサンダン(釜山堂)というベーカリーです。釜山発祥のローカルブランドで、地元の素材にこだわった焼きたてのパンが並びます。コーヒーの前に寄って、温かいパンを一つ買っておくのも悪くありません。

そのすぐ近くにはチョンジッカンというテジクッパ(豚スープごはん)の専門店があります。ミシュランにも掲載された実力店で、釜山のソウルフードとも言えるこの一品を味わうにはうってつけの場所です。カフェの前後に食事を済ませたい方にはとても便利な立地です。

釜山駅に戻るなら、駅舎2階にあるB&C製菓にも足を運んでみてください。創業40年以上の釜山のローカルベーカリーで、列車やフェリーに乗る前にパンを買い込むにはぴったりの場所です。

もう少し時間に余裕があれば、釜山駅の裏手、国際フェリーターミナルの近くにある北斗七星図書館も選択肢に入ります。建築が印象的な無料の公共図書館で、静かに本を読んで過ごせます。
ブラウンハンズ百済は、コーヒーの味だけで語れる場所ではありません。けれど、100年近い時間を経てきた壁に囲まれながら、ゆっくりと一杯を飲む時間には、他のカフェでは得がたい静けさがあります。KTXの発車前のひとときにも、国際フェリーターミナルへ向かう前の最後の一休みにも、この場所はちょうどいい距離にあります。道路を渡って、路地をひとつ曲がるだけ。それだけで、釜山駅前とは思えない静かな時間が待っています。
ブラウンハンズ百済のよくある質問(FAQ)と利用のコツ:Wi-Fi、トイレの暗証番号、駐車場情報
ブラウンハンズ百済はどこにありますか?釜山駅からの行き方を教えてください。
ブラウンハンズ百済は、釜山広域市東区中央大路209番キル16にあります。釜山駅7番出口を出て道路を渡り、CU(韓国のコンビニチェーン)のある路地に入ると、右手に赤レンガの建物が見えます。徒歩約2分です。
ブラウンハンズ百済の営業時間を教えてください。
毎日10:00から21:30まで営業しており、ラストオーダーは21:20です。不定休のため、臨時休業の場合はSNSで事前に告知されます。訪問日が決まっている場合は事前に確認しておくと安心です。
ブラウンハンズ百済のコーヒーの値段はいくらですか?
アメリカーノはHOTが₩6,300(約740円)、ICEが₩6,800(約800円)です。アイスミルクティーは₩8,300(約980円)、ケーキは各種₩8,900(約1,050円)で、釜山の一般的なカフェと比べるとやや高めの価格帯です。これは文化財に指定された建物での空間体験を含んだ価格と考えるとよいでしょう。※価格は1円≒8.5ウォンで換算(2026年9月時点)。為替レートにより変動する場合があります。
ブラウンハンズ百済の建物にはどんな歴史がありますか?
この建物は1927年に崔龍海医師が開業した百済病院で、釜山初の近代式民間総合病院でした。1932年の閉院後は中華料理店、日本軍の将校宿舎、釜山治安司令部、結婚式場と用途が次々に変わり、2016年にインテリアブランド「ブラウンハンズ」がカフェとして再生しました。韓国の登録文化財第647号に指定されています。
ブラウンハンズ百済に駐車場はありますか?
ありません。駐車場の割引サービスも行っていないため、車で訪れる場合は近隣の有料駐車場を利用する必要があります。釜山駅から徒歩2分なので、公共交通機関でのアクセスをおすすめします。
ブラウンハンズ百済ではコーヒー豆を選べますか?
はい。コーヒー系ドリンクの注文時に、自家焙煎の2種類のブレンドから選択できます。ミッドナイトはダークチョコレートとローストアーモンドの深いコクが特徴で、メイフェアは花のような香りとすっきりした酸味が持ち味です。バリスタが注文時に好みを聞いてくれます。
ブラウンハンズ百済の建物内にカフェ以外の見どころはありますか?
3階にイビナインギャラリーという無料の展示スペースがあり、定期的にアート展示が入れ替わります。カフェの営業時間内に自由に観覧できます。なお、以前2階にあった書店「チャンビ釜山」は2025年11月に閉店しています。