南原ピオリウム|光が花のように咲く、韓国の穴場メディアアート

全州(チョンジュ)を訪れる日本人旅行者は多いのですが、そこからバスで約1時間南下した先にある南原(ナムウォン)まで足を延ばす方はまだ少ないかもしれません。南原ピオリウムは、その静かな街に生まれた体験型メディアアート展示空間で、今回の旅で予想以上に印象に残った場所でした。

南原は全北特別自治道(旧・全羅北道)の南東部に位置する小都市で、ソウルからはKTXで約2時間、全州からは市外バスで約1時間の距離にあります。朝鮮時代の恋愛物語『春香伝(チュニャンジョン)』の舞台として知られ、日本でいえば「韓国版ロミオとジュリエット」のような存在です。毎年春に開催される南原春香祭は1931年から続く韓国最古の公演芸術型地域祭りで、100万人以上が訪れます。ただ、祭りの時期を外せば街はとても穏やかです。ピオリウムがある「ソリギル」という通りの名前は、この地域に根づくパンソリ(韓国の伝統声楽芸術)に由来しています。

南原ピオリウムの建物外観。全北特別自治道南原市にある体験型メディアアート展示空間

利用案内

項目内容
住所全北特別自治道 南原市 ソリギル50
入場料大人(19歳以上):₩12,000(約1,260円)
青少年(13〜18歳):₩8,000(約840円)
子ども(7〜12歳):₩6,000(約630円)
営業時間平日 10:00〜19:00 / 金・土 10:00〜21:00
定休日毎週火曜日
駐車場無料
設備ロビーにロッカーあり

廃墟から生まれたアート空間

もともとこの場所は、コンドミニアムの建設が予定されていた土地だったそうです。しかし工事は途中で中断され、建物の骨組みだけが残された状態が長く続いていました。その後、南原市の都市再生プロジェクトによって複合文化空間として再構成され、展示館であるピオリウムを中心に、屋外の月光庭園やカフェが併設される形になったのです。

「ピオリウム」という名前は、韓国語の「咲く(ピオナダ)」に由来しています。この展示のモチーフとなったのは、南原出身の画家・金炳宗(キム・ビョンジョン)氏の作品『花紅山水』です。実際に中に入ると、光と映像が花のように壁面いっぱいに広がっていく演出を見て、その名前の意味がすぐに腑に落ちました。

南原ピオリウムの展示室内。光と映像が壁面に投影されるメディアアート空間

展示空間を歩く — 6つの部屋をめぐる

入口は地下1階にあり、チケットを発券してからそのまま展示へと進む動線になっています。出口も同じ地下1階に戻ってくる構造なので、途中で外に出る必要がなく、一方通行で気楽に回ることができます。

内部は全6つの空間に分かれており、それぞれ異なる映像テーマで構成されています。序盤は光の色彩と動きが中心の抽象的な演出が続き、中盤からは映像とサラウンドサウンドが重なり合って没入感が一気に増していきます。

決められた解説パネルやオーディオガイドに沿って進むタイプではなく、自分のペースで歩きながら、視線が止まった場所で自由に写真を撮るスタイルです。全体の所要時間は約30〜40分ほどでした。座れるスペースがある部屋では、他の来場者がかなり長い時間くつろいでいる姿も見かけました。

南原ピオリウムのフォトゾーン。椅子の周囲に没入型の映像が投影されている

日本のメディアアートとの比較

正直に書くと、この旅の少し前に日本国内で有名なメディアアート展示を訪れたことがあります。写真で見て期待していたほどではなく、フォトスポットが思ったより少なくて、後半はやや単調に感じてしまいました。

それと比べると、ピオリウムは空間ごとの演出の幅が広く、後半になるほど見ごたえが増していく構成でした。特に印象に残ったのは、後半にある「まるで妖精の庭園に迷い込んだような」空間です。壁と床に緑と花の映像が投影され、背後の映像が数秒ごとに切り替わるため、同じ場所で撮った写真でもタイミングによってまったく違う雰囲気になります。

南原ピオリウム後半の展示室。緑と花の映像が投影された妖精の庭園のような空間

展示を「眺める」だけで終わらないのが、この場所の大きな特徴だと感じました。光に包まれ、音が四方から聞こえてくると、いつの間にか鑑賞者ではなく参加者になっている — その感覚の変化が、6つの部屋すべてを飽きずに歩けた理由なのだと思います。

南原ピオリウムのグッズショップに並ぶ南原オリジナルグッズ

グッズショップ・カフェ・月光庭園

展示を見終わると、最初に入った地下1階へ戻ります。すぐ近くにある「キッズアトリエ」というエリアには、南原にちなんだグッズが並んでいて、休憩スペースとしてもきれいに整備されていました。訪問時にはまだ販売開始前のサンプル展示の段階で購入できなかったのが少し残念でした。品質がしっかりしていて、お土産としてちょうどよさそうだったのですが。

南原ピオリウム出口付近のキッズアトリエ休憩スペースとカフェエリア

地上1階に上がると、カフェと「月光庭園」という屋外テラスがあります。カフェでは南原産のクラフトビールやデザートが提供されており、周囲の丘を眺めながらゆっくり過ごすことができます。展示の余韻にいつまでも浸っていたくなるような、心地よい空間でした。

ピオリウムのすぐ隣には「ヒドゥンブリッジ」という名前のカフェもあります。店内は読書スペースのような静かな雰囲気で、ポストカードやゲストブックが置いてありました。窓からの景色もよく、10分だけ休むつもりが気づけば1時間近く過ごしていた — そういう場所です。

半日コースの組み方

南原ピオリウムは、単体の目的地というよりも半日コースの中心として組み込むのがおすすめです。展示そのものは30〜40分、カフェやショップも含めると60〜90分が目安になります。

南原ピオリウムの向かいにある勝月橋(スンウォルギョ)。歩行者専用のフォトスポット

展示館のすぐ向かいには勝月橋(スンウォルギョ)という歩行者用の橋があり、フォトスポットとして地元でも人気があります。橋を渡って景色を楽しみ、戻ってくるまでおよそ20分ほどの散策です。

南原で丸一日過ごす場合は、午前中に広寒楼苑(クァンハルルウォン/春香伝の舞台)を訪れ、市内で昼食をとってから午後にピオリウムへ向かう流れがスムーズです。完全室内型の展示なので、梅雨の時期や韓国の厳しい夏の暑さの中でも、天候に左右されずに楽しめるのが大きな利点です。

南原ピオリウムの地下1階にある展示入口とチケット発券エリア

まとめ

屋外の観光スポットが中心の南原において、これだけ丁寧に作り込まれた室内展示があることに少し驚きました。所要時間は短めでも、「ただ通り過ぎて終わり」にならない体験の密度がありました。

光と映像が壁から床へ、そして自分の周囲へと静かに広がっていくあの感覚は、写真や動画ではなかなか伝わりにくいものです。実際にその場に立ち、空間ごとに変わる色と音を浴びて初めてわかる心地よさがあります。

全州を旅の拠点にしている方であれば、南原への移動は難しくありません。南原ピオリウムは、旅程に静かな余白をひとつ加えてくれる — そんな場所でした。

南原ピオリウムとはどのような場所ですか?

南原ピオリウムは、全北特別自治道・南原市にある体験型メディアアート展示空間です。画家・金炳宗氏の風景画『花紅山水』をモチーフに、光・映像・サラウンドサウンドで構成された全6室の展示を体験できます。廃コンドミニアム建設跡地を都市再生プロジェクトで再構成した複合文化施設の一部です。

入場料はいくらですか?

大人(19歳以上)は₩12,000(約1,260円)、青少年(13〜18歳)は₩8,000(約840円)、子ども(7〜12歳)は₩6,000(約630円)です。駐車場は無料で利用できます。

展示の所要時間はどのくらいですか?

展示室のみであれば約30〜40分が目安です。併設のカフェ、グッズショップ、屋外の月光庭園まで含めると、60〜90分ほど見ておくとゆとりを持って楽しめます。

営業時間と定休日を教えてください。

平日は10:00〜19:00、金曜日と土曜日は10:00〜21:00まで営業しています。毎週火曜日が定休日です。

全州やソウルからのアクセス方法は?

全州からは市外バスで約1時間、ソウルからはKTXで南原駅まで約2時間です。南原駅またはバスターミナルからはタクシーで容易にアクセスできます。住所は南原市ソリギル50です。

子ども連れでも楽しめますか?

はい。展示は完全室内型で、一方通行のフラットな動線になっています。出口付近にはキッズアトリエという休憩・グッズスペースもあります。映像演出が中心なので小さなお子さまも視覚的に楽しめますが、暗い空間が一部あるため、極端に暗所が苦手なお子さまにはご注意ください。

ピオリウムの周辺にはどんな観光スポットがありますか?

展示館のすぐ向かいには勝月橋(スンウォルギョ)というフォトスポットの橋があります。敷地内の月光庭園やヒドゥンブリッジというカフェも徒歩圏内です。南原を代表する観光名所・広寒楼苑(春香伝の舞台)もタクシーですぐの距離にあり、半日コースとして組み合わせるのがおすすめです。

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